「猫エイズって、予防できるの?」 「ワクチンがあるって聞いたけど、本当に打ったほうがいいの?」
そう不安に思ったことがある方は、多いのではないでしょうか。
私もそうでした。
愛猫あんこがFIV陽性と診断されたとき、「もっと早く正しい知識を持っていれば」と何度も思いました。あんことの日々については、体験談編で詳しくお話ししています。
ただ、結論からお伝えすると、猫エイズ(FIV)は予防できる感染症です。
飼い主がやるべきことは3つだけ。特別な医療行為ではなく、日々の飼い方の工夫で感染リスクをほぼゼロにできます。
この記事では、FIVの感染を防ぐための具体的な予防策を、最新情報(ワクチンの終売事情を含む)とあわせて解説します。
- これから猫を迎えようとしている方(特に保護猫を検討中の方)
- 多頭飼いで、FIVの感染が心配な方
- 「猫エイズのワクチンって必要?」と迷っている方
- FIVキャリア猫と暮らしていて、他の猫への感染を防ぎたい方
そもそもFIVってどんな病気?」という方は、概要編を先に読んでください。
猫エイズ(FIV)は「予防できる」感染症

猫エイズと聞くと、「怖い」「防ぎようがない」と感じるかもしれません。
でも、FIVは感染経路が限定的です。正しい対策をとれば予防できます。
以下のポイントを3つだけ押さえてください。
- 主な感染経路はケンカによる咬傷
感染猫の唾液中のウイルスが、噛み傷から相手の体内に入ることで感染します。 - 空気感染や日常的な接触では感染しません
同じ空間にいるだけでうつることはありません。 - ウイルスは体外に出ると非常に弱く、数分〜数時間で失活します
家庭用のアルコール消毒でも不活化できます。

空気感染しないんだ…。なんか”エイズ”って聞くだけで怖くなってたよ。

うん、名前のイメージが先行しやすいけど、感染経路を知ると”防げる病気”だってわかるよ。
つまり、感染猫と直接ケンカさせなければ、FIVはほぼ防げるということです。
次の章からは、飼い主が具体的にできる予防策を見ていきましょう。
FIVの感染経路やステージについて詳しく知りたい方は、概要編もあわせて読んでみてください。
飼い主ができるFIV予防策3つ

FIVの予防は、特別な治療や高額な設備が必要なわけではありません。
飼い主の「飼い方の選択」で、感染リスクをほぼゼロにできます。
完全室内飼いの徹底
FIV予防で最も効果的なのが、完全室内飼いです。
FIVの主な感染経路は、外の猫とのケンカによる咬傷です。
外に出なければ、感染猫と接触する機会そのものがなくなります。
「うちの子は大人しいから大丈夫」と思っていても、外に出た瞬間に野良猫と遭遇するリスクはゼロではありません。
日本では外に出る猫のFIV陽性率が約20%以上という報告もあります。5匹に1匹以上がキャリアという計算です。
完全室内飼いを徹底するためには、脱走対策も欠かせません。
- 玄関: 二重扉やペットゲートを設置する
- 窓: 網戸ストッパーやロックを取り付ける
- ベランダ: 隙間をネットでふさぐ。ベランダに出さないのが理想

窓を開けた瞬間にダッシュする子とか、いるもんね…。

一度でも外に出ちゃうと、ケンカだけじゃなく交通事故や他の感染症のリスクも出てくるよ。室内飼いはFIV以外の予防にもなるんだ。
去勢・避妊手術で感染リスクを下げる
去勢・避妊手術も、FIV予防に効果的です。
理由は2つあります。
- ①脱走リスクの軽減
未去勢・未避妊の猫は、発情期に外に出ようとする行動が強くなります。去勢・避妊をすることで、発情による脱走衝動を大幅に抑えられます。 - ②ケンカの減少
特にオス猫は、去勢後に性格が穏やかになる傾向があります。万が一、他の猫と接触しても、ケンカに発展しにくくなります。
さらに、交尾もFIVの感染経路の一つです。去勢・避妊によって交尾の機会がなくなれば、この経路も断てます。

去勢・避妊って、繁殖を防ぐだけじゃないんだね。

うん。FIVの予防って考えると、手術のメリットがもう一段階はっきりするよ。
FIVワクチンは現在使えない|製造元が販売終了を発表
「猫エイズにはワクチンがある」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
確かに、以前は「フェロバックスFIV」というワクチンが日本国内で使用されていました。
しかし、このワクチンは現在販売を終了しています。
製造元のゾエティス・ジャパン株式会社が2022年1月に、販売終了を正式に発表しました。
終売の理由は「製造業者との契約満了」です。フェロバックスFIVは国内で唯一の正規FIVワクチンだったため、現在は日本国内でFIVワクチンを接種する手段がありません。
(参考:ゾエティス・ジャパン「販売終了に関するお詫びとご案内」(PDF))
もともとこのワクチンには、いくつかの課題が指摘されていました。
- 感染阻止率は約70%とされ、完全な予防は保証されなかった
- 接種後に抗体検査でFIV感染との区別がつきにくくなる
- WSAVA(世界小動物獣医師会)もワクチンの有効性に否定的な見解を示していた
- ごくまれに、接種部位に悪性腫瘍(ワクチン関連肉腫)が発生する報告もあった
ワクチンという選択肢がなくなった今、FIV予防の柱は「完全室内飼い」と「去勢・避妊手術」の2つです。
逆に言えば、この2つを徹底していれば、ワクチンがなくても感染リスクは大幅に抑えられます。

ワクチンがないって聞くと不安になるけど…。

でもワクチンがあった頃も、基本は室内飼いと去勢・避妊だったんだよ。
その2つをしっかりやれば、必要以上に怖がらなくて大丈夫
新しく猫を迎えるときの感染チェック

FIV予防で見落とされがちなのが、新しい猫を迎えるときの検査です。
特に保護猫や元野良猫を迎える場合、FIVに感染している可能性があります。
外で生活していた猫は、他の猫とケンカした経験がある確率が高いためです。
新しい猫を迎える際には、以下の手順を守ってください。
- 動物病院でFIV抗体検査を受ける
血液検査で簡単に調べられます。猫白血病(FeLV)の検査も同時に行うのが一般的です。費用は3,000円〜5,000円程度の病院が多いです。 - 検査結果が出るまでは先住猫と完全に隔離する
別の部屋で過ごさせ、食器・トイレも分けます。直接の接触は絶対に避けてください。 - 陰性でも再検査を検討する
FIVには「ウインドウ期間」があります。感染直後はウイルスに対する抗体がまだ作られておらず、検査で陰性と出ることがあります。感染の可能性がある猫は、1〜2か月後に再検査を受けると安心です。

検査で陰性だったら、すぐ一緒にしていいのかと思ってた。

ウインドウ期間があるから、1回の検査だけで安心しちゃダメなんだよ。
再検査まで隔離を続けるのが安全だよ
多頭飼いでのFIV感染を防ぐには

1頭だけで飼っている場合、完全室内飼いを徹底すればFIVの感染リスクはほぼありません。
問題になるのは、多頭飼いのケースです。
特に、保護猫を新しく迎えたらFIVキャリアだった、先住猫にうつらないか心配というのはよくある悩みです。
結論から言うと、FIVキャリア猫と非感染猫の同居は不可能ではありません。
ただし、条件があります。
同居の大前提|ケンカをさせないこと
FIVの主な感染経路は咬傷です。 日常的にグルーミングし合う程度の接触では、感染リスクは高くないとされています。
ただし、「リスクが低い」と「リスクがゼロ」はまったく違います。
猫同士の相性が悪ければ、いつケンカに発展するかわかりません。
飼い主が見ていないときにケンカが起きれば、気づかないうちに感染が成立する可能性もあります。
同居させる場合は、以下を基本ルールとしてください。
- 相性を慎重に見極める:対面はケージ越しから段階的に進める
- 猫同士だけにしない:飼い主不在時は別の部屋に分ける
- 去勢・避妊手術を済ませておく:発情によるケンカのリスクを減らす
生活空間の分け方と衛生管理
FIVキャリア猫と同居する場合は、生活空間の工夫も大切です。
食器とトイレは必ず分けてください。
FIVウイルスは唾液にも含まれています。感染力は弱いものの、食器の共有は避けるのが安全です。
消毒は家庭用の洗剤やアルコールで十分です。
FIVウイルスは体外では非常に弱く、一般的な消毒で不活化できます。食器やトイレまわりを定期的に清掃・消毒しましょう。
理想は部屋を完全に分けることです。
相性が良好で穏やかに過ごせている場合でも、キャリア猫の体調が悪化するとウイルス濃度が高まる可能性があります。できれば別室で生活させるのが最も安全です。

完全に部屋を分けるのが難しい家もあるよね…。

その場合はせめて食器とトイレだけは分けて、ケンカの兆候がないか毎日よく観察すること。できることから始めるのが大事だよ!
新しい猫を迎える前に検査を忘れずに
多頭飼いでのFIV感染を防ぐ最大のポイントは「迎える前の検査」です。
先住猫がいる家庭に新しい猫を迎える場合は、合流前に必ずFIV抗体検査を受けさせてください。
検査結果が出るまでは、先住猫と完全に隔離します。
この手順は、前のセクション「新しく猫を迎えるときの感染チェック」で詳しく説明しています。
検査と隔離を「面倒だから」と省略してしまうと、取り返しのつかない結果になりかねません。
手間はかかりますが、先住猫の命を守るための最低限のステップです。
よくある質問(FAQ)

- Q猫エイズは人間にうつりますか?
- A
うつりません。FIVは猫にのみ感染するウイルスです。人間や犬など、猫以外の動物には感染しません。名前が似ているため誤解されがちですが、人間のHIVとは別のウイルスです。
- Q完全室内飼いなら、FIVの検査は必要ありませんか?
- A
一度は受けておくことをおすすめします。特に保護猫や元野良猫の場合、迎える前に外でケンカをしていた可能性があります。室内飼いにしてからも、感染の有無を知っておくことで適切な健康管理ができます。
- Q多頭飼いで、1匹がFIV陽性とわかりました。他の猫にもう感染していますか?
- A
すぐに断定はできません。他の同居猫にもFIV抗体検査を受けさせてください。ウインドウ期間を考慮し、1〜2か月後に再検査を行うと確実です。結果が出るまでは、可能な範囲で生活空間を分けてください。
- Q去勢・避妊手術は何歳で受けさせるべきですか?
- A
一般的には生後6か月頃が目安とされていますが、猫の健康状態や体格によって適切な時期は異なります。かかりつけの獣医師に相談して判断してください。
- QFIVキャリア猫を新しく迎えたいのですが、先住猫がいます。同居は可能ですか?
- A
条件付きで可能です。ケンカをさせないこと、食器とトイレを分けること、できれば部屋を分けることが基本です。詳しくはこの記事の「多頭飼いでのFIV感染を防ぐには」をご覧ください。
まとめ|猫エイズは正しい知識で予防できる

猫エイズ(FIV)は、感染経路が限定的な病気です。
正しい知識を持ち、飼い方を工夫すれば、感染リスクをほぼゼロにできます。
この記事のポイントを振り返ります。
- 完全室内飼いを徹底する。 外の猫との接触を断つことが最大の予防策
- 去勢・避妊手術を受けさせる。 脱走・ケンカ・交尾のリスクを減らす
- FIVワクチンは終売。 現在は接種できないため、室内飼いと手術がより重要
- 新しい猫を迎えるときは、必ず事前にFIV検査を受ける
- 多頭飼いでは、食器・トイレを分け、ケンカをさせない工夫をする
今日からできることとして、まずは愛猫のFIV検査を受けてみてください。
感染の有無を知ることが、予防の第一歩です。かかりつけの動物病院に相談すれば、血液検査で簡単に調べられます。
▶ 猫エイズ(FIV)シリーズ総合ガイドはこちら